MS 明朝; font-weight: 700"> 「ただ。私は貴方に負けるつもりはありません。奪うというのなら全力で掛かってきてください」

 スプライトはそう言い残し、洞窟の中へと戻っていった。

「――――」

 従事は空を見上げた。

 未来の世界では見ることのできない美麗な星空だった。

 ポテチを思い出した。

 スプライトの強さがポテチと同等であるとするならば、それは究極と呼んでも差し支えのない高さの壁だ。

 だが、従事は先程の決意を思い出した。

 例え相手が百獣の王であろうと、その先に希望があるのなら戦って勝つ。

「――!」

 七瀬のことを考えると頭が痛んだ。

 夕日で頭の中が真っ赤になり、頭の中が七瀬の二文字で一杯になった。膨大な量の七瀬という二文字は従事の脳みそを破裂させるかの勢いで駆け巡った。

 従事は大きく息を吸い、吐き、思考を落ち着けた。

 

 

 洞窟の奥へと進む従事の心は未だ揺らいでいた。

 出会った頃のようなスプライトに対しての敵意はもうない。親しみも覚えた。そんなスプライトとこれから戦うのだ。戦いを回避することはできる。従事が一言、「メダルは諦めるよ」そう言うだけで、全てが丸く収まるのだ。

 それでも従事は戦うことを選んだ。

 七瀬と会いたかった。

 アリカがフラッタを捨ててまで、従事を選んでくれたのはこんな心境だったのかもしれない。本当は皆幸せなのが一番だ。

 

 

 スプライトは洞窟の奥で正座し、散らかった聖都の宝物を一箇所に寄せ集めていた。

 振り向きもせずに声を掛けてきた。

「戦う覚悟はできましたか?」

「ああ」

「いつでもいいですよ」

 従事は銀の棒のスイッチを入れ、輝く翼のようなアーチを出現させた。未熟な従事には強力すぎる張りの弦に矢を掛け、スプライトを狙った。

 スプライトは振り返らない。

 背を向け、宝物の片付けをしていた。

 分かっている。

 この矢を放った瞬間が戦闘開始となる。

 穏やかなスプライトが牙を剥くのだ。

 平時が静かであるが故、スプライトがソードを抜いた時の恐ろしさは想像し難かった。ただ、容赦なくあの老人をばらばらに斬り捨てたのは覚えている。アリカのクビを撥ねようとしたことも覚えている。

「――――」

 ここで死ぬならそれも良い。

 ――逃げれば一生後悔する。

 矢を放った。

 

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